2019年2月15日金曜日

【小規模小売店向け】無料POSレジへの乗り換えを真面目に検討してみた

タブレットとクラウドを使ったPOSレジが浸透しつつある昨今、地方の小売店は新規店舗でも未だにアナログなキャッシュレジスターを導入しているケースも少なくないようである。軽減税率対策補助金もあることだし、比較的身近な小売店にPOSレジへの乗り換えを薦めてみようと考え、無料で利用できるPOSレジアプリを比較検討したので備忘録。基本的に満足いくものがなかったため、主に何がダメだったかを指摘した上で乗り換え時の考察をすることにした。
※ 記事作成時、正直なところ、大した比較をしていません。少し触っただけで結論が出てしまったので。なので、今後詳細な情報を追加していく可能性はあります。


前提

比較対象のPOSレジ

  • Airレジ
  • Square
  • Loyverse POS
国産で比較的メジャーなスマレジとユビレジはPOSレジは当方で必須機能としたもの(スマレジは月別売上げ分析、ユビレジはデータエクスポート)が利用できないため、ハナから無料で使わせる気などないのだろうと判断し、対象外とした。
スマレジやユビレジは飲食店に強い機能が揃っているなどの特徴を備えているので、有料で利用することを前提にして検討するPOSレジと考えて良いだろう。

対象

  • 小規模小売店での利用であること。小規模と何か、と問われても厳格な定義はしていないので悪しからず
  • (アナログな)キャッシュレジスターからの乗り換えであること

POSレジの紹介と基本的な比較

Loyverse Townの以下の記事をご覧いただきたい。
これらを読んだうえで、気になるものがあれば公式サイトの情報を参照するのが良い。自称「POSレジ情報専用サイト」が乱立しているが、基本的に公式サイトの焼き増しで、ロクな比較もしておらず、何の参考にもならない。
専用の比較サイトよりPOSレジ提供元からの情報のほうが真面目に比較しているというのが何とも皮肉である。

不満

全般的な不満

  • 仕入先別の売上票を作成する機能がない(代替案あり)
    小規模小売店では仕入先からの委託販売をしているところも多かろう。委託販売では基本的に月毎など定期的に売上票を仕入先に連絡していると思われる。しかし、どのPOSレジも商品情報に仕入先を設定できないため、仕入先別の売上票を作成する機能がない。商品を分類するための「カテゴリ」を利用すれば実現可能だが、当然商品をカテゴリで分類することはできなくなる。
  • 販売情報を全く編集できない
    「レジ打ちした情報を編集できちゃダメだろ」という声が聞こえてきそうであるが。
    例えば、露店販売ではお客さんが殺到して、いちいちレジ打ちなんてしれいられないケースが少なからずある。そういうことが原因で金額と在庫が合わないような場合に、後から販売情報を追加することも考えられる。その時に日をまたいでしまえば売り上げはPOS上、次の日に加算されることになってしまう。こういうときにせめて日付だけでも修正させて欲しいわけだ。クレカや電子マネーの取引まで書き換えてはいけないが、現金だったら前日の日付を設定するくらいさせほしいわけだ。
  • データのインポートができない
    どのPOSレジも分析機能を謳っているが、過去の売り上げデータを取り込むことができないので、分析はあくまでPOSレジ導入後のデータだけになる。ユーザは当然過去のデータも含めて分析したいはずだから、それをするためには結局POSデータをエクスポートして別の何かで分析をすることになる。日々のサマリーが簡単に閲覧できることは価値だが、分析のためにエクスポートが必須になるのであれば、分析機能なんて最初からいらない、という結論になってもおかしくはない。
    過去のデータなんて保存していない、そもそも分析なんてしない、といったユーザならPOSレジなんて必要ないのだから、分析機能を売りにするのであればデータインポートさせてくれよ、というところである。

POSレジ個別

Airレジ

国産無料レジアプリの雄。国産信仰ならこれ一択だろう。
■不満点
  • 端末がアップル製品のみ
    つまり、無駄に高価な選択しかできない。POSレジはそこそこタッチパネルに高負荷をかけるので、無駄に高価な端末を選びたくないユーザも多いのではないか?Squre、Loyverseともアップルの他にAndroidを選択可能なことがマイナス要因を強めている。
  • レジアプリに商品の写真が取り込めない
    直観的に間違いのない選択をするためにも商品写真は欲しかろう、他のアプリではできるのだから。

Squareレジ

世界最大のクラウドPOSレジ。スマホでのクレジットカード決済が主な事業で、そのことがSquareのボトルネックともなりえる。
■不満点
  • アカウント作成時に事業内容を登録する必要があり、その変更ができない
    クレジットカード利用が前提(利用なしでも運用可能だが)のため、アカウント作成時に設定した事業内容に不備があれば、また1からやり直しとなる。正直、事情が分からないものにはハードルが高い印象を受ける。そのため、別の事業に該当する販売をするためには別のアカウントを作成しなければならない。クレジットカード利用を前提としない小売店であれば、このことは足かせ以外の何物でもない。
  • カスタマーディスプレイが利用できない
    カスタマーディスプレイは、レジ打ちの合計金額をお客さん向けに表示するアレのこと。POSレジの場合、基本的にはカスタマーディスプレイもタブレットを利用するのだが、Squareにはその機能がない。これが受け入れられないケースが多いのではないだろうか?小売店のレジスターについてないことがないからね、日本では。接客販売のようなケースでなければ厳しい。
  • 個人的には、アプリがGPSの位置情報を要求してくることも気に入らない。事業者情報を何かと提出しているうえに、レジアプリが何のために位置情報を取得するのか?

Loyverse POS

欧州最大のPOSレジとの触れ込み。現状日本ではあまり知られていないが、アプリ登録者数で見ればAirレジよりはるかに多く、世界レベルで多く利用されていることが伺える。日本における情報発信に積極的な姿勢が出ており、今後の動向が楽しみ。
■不満点
  • 会計ソフトとの連携ができない
    他のものも特定の会計ソフトしか連携していないので、これが不満点になるかどうかはあくまで比較でしかないが。
  • ダッシュボードが頻繁に強制終了する(Windows版Chrome上で)
    利用しているバージョンはChrome71.0.3578.98だが、ダッシュボードが頻繁に強制終了し、ログインからやり直しになる。特定の環境とバージョンによるものかもしれないが、若干の不安を覚える。

考察

オススメのPOSレジ

全般的な不満からすれば、現状ではPOSレジ乗り換えのメリットを推奨先に感じてもらえない、という印象。強いて選ぶならば、ここでは将来性を期待してLoyverse POSを推しておきたい。個別の不満という点では致命的になる問題がないという消極的な理由であるが。

キャッシュレジスターからの乗り換え

既存の小規模小売店のキャッシュレジスターからPOSレジに乗り換えたケースで仕事がどう変わるのか、考察してみる

委託販売

小売店が委託販売をしている場合、仕入先ごとの売上票を定期的に送付しているだろう。その場合、キャッシュレジスターから取得したデータをそのまま紙に出力し、Faxなり郵便なりで送付するケースが多いのではないだろうか?
紹介したPOSレジには仕入先ごとの売上を表示するためにはカテゴリ別売上を出力することになる。ではそれをどうやって顧客に伝えるのか?カテゴリ別出力はブラウザの画面に表示されるか、CSVファイルなどにエクスポートすることになる。ブラウザから取得する場合、それを1つ1つ紙に印刷して送付するのが一番早いか?ファイルエクスポートの場合、別途Excel等で台紙を作成し、それを読み込ませて印刷することになるだろう。
つまり、委託販売をしている小規模小売店では、POSレジの置き換えによって仕事が増えてしまうことになりかねない。エクスポートしたデータを処理するSEような人材を抱えている業者なら上手に対応できるかもしれないが、ほどんどの小規模小売店ではそのような人材はいないだろう。これは小規模小売店にPOSレジが導入されない最大の理由なのではないだろうか?

在庫管理(棚卸)

POSレジへの乗り換えで最も効果的なものが在庫管理ではなかろうか。どのPOSレジも登録した在庫数と販売数を連動することができるので、月次棚卸などの棚卸処理が楽になる。タブレットの在庫数を見ながら実際の在庫数を数えれば良いので、わざわざレジから出力した売上票を確認する必要がない。タブレットのほうが視認性もよいだろう。
もっとも、私が知る限り、小規模小売店で月次棚卸を実施しているところはそれほど多くない。そういう小売店が委託販売をしているという事実が恐ろしいのだが(万引きなどによる紛失リスクを仕入先に被せることになる)。

売上分析

POSレジには一通りの分析機能がついているので、これもメリットの1つであることには間違いない。そもそもキャッシュレジスターで運用している小売店が売上をPCなどに取り込み分析しているケースなど稀であろう。そういう小売店がPOSレジ導入によって分析データの有効性を認知し販売力を高める方向に動くかもしれない。分析に興味を持てなかったところで現状維持だから、マイナスにはならない。まあ、分析しない小売店にPOSレジは不要であることも確かであるが。
ただし、前述した通り、過去の売上データは取り込むことができないので、過去データも含めて分析したい場合には、別途分析用のアプリケーション等が必要になる。

会計

そもそも会計システムと連動するようなキャッシュレジスターを利用している場合、使用する会計システムにPOSレジが対応していない場合、やはり仕事が増えることになる。
メリットがあるのはPOSレジが対応している会計ソフトに売り上げデータを手入力していた場合で、これだけでも導入に値するメリットはありそうだ。ただし、前述のデメリットがクリアされていればの話しである。

軽減税率対応

この10月から導入されるという軽減税率。食料品販売と飲食店を兼ねている店舗の場合、キャッシュレジスターが軽減税率に対応していなければ、さすがに新しいレジを導入することになるだろう。しかしながら、軽減税率対応のキャッシュレジツターも普通に販売されており、POSレジを選択する理由とはならないだろう。個々のケースで判断する以外にない。

結論

考察を見ていただければわかるとおり、現状のPOSレジでは乗り換えに前向きになれない事業者が多いだろう。それは多くの事業者が業務委託で商品を販売していることに起因するのではなかろうか。
ただ単純にPOSレジへの乗り換えを薦める理由がないことは間違いないだろう。今回考察したデメリットが影響しないケースやデメリットを回避/解決することができるのであれば前向きに検討すればよい。
しかし、個人的には、今回の検討により、小規模事業者のIT利活用が進まない理由を垣間見たように思う。進まない理由は主に利用者側のITリテラシーに起因するものだと考えていたが、実はサービスを提供する側も小規模事業者へのソリューションを提供できていないのである。小規模事業者のIT利用なんて進展するわけがない。

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