以下の記事が目に入る。
「AIで弁理士が失業」に異議 「そんなに単純な仕事じゃない」 日本弁理士会の梶副会長(Yahoo!ニュース)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171116-00000074-zdn_n-sci&utm_content=buffera06a0&utm_medium=social&utm_source=twitter.com&utm_campaign=buffer
弁理士の仕事の92%はAIによって代替可能、という研究機関らの発表に日本弁理士会の会長がご立腹なようで。それはさておき、この中で「簡単にAIに代替できない」こととして、以下のもの挙げられている。
- 知的財産とは「人間の生活を豊かにするもの」→AIに「人間とは何か」が分かるのか
- 依頼人との空気感が重要→依頼人の放つ「空気」が読めるのか
- 依頼人の意図を把握する必要がある→依頼人自身も気付いていない場合もある
- 最適解は常に変化する→出願断念、応答断念が最適解の場合もある
- 発明者を見抜く力がいる→発明者は往々にしてうそをつく
これを見たときの第一感が「AIの進化についていけてない」であった。改めて読み返せばそれ以前の問題のほうが多いが、1項目づつ簡単な所感をば。
1. 知的財産とは「人間の生活を豊かにするもの」→AIに「人間とは何か」が分かるのか
この方、「人間とは何か」が分かるのか。。。ぜひ教示して欲しいものだ。まあ、はっきり言って何が言いたいのかよくわからない。あいまいな事象ならAIにはわからないだろ、という印象を持っているのだろう。
2. 依頼人との空気感が重要→依頼人の放つ「空気」が読めるのか
これもまた「空気感」という謎のワード。その昔はやった「KY」のことを言いたいのだろうか。これも1と同じだが、そんなもの人間だってよくわらない。また、何をもってAIにはできない、と判断してるのだろうか?人間が「空気を読む」場合の判断材料は恐らく「視覚」「聴覚」「言語」だろうから、AIに代替可能なものではないだろうか?もっとも人間がこの人の言う「空気を読む」ことを定義できるとは思えないが。
3. 依頼人の意図を把握する必要がある→依頼人自身も気付いていない場合もある
この方が自分自身で何を言ってるのか分かってないことと同じように(笑)、依頼人も自身が気づいてないことがあるようだ。しかし、そういうことこそAIが得意とするところじゃないの?実際に、Webサイトの閲覧者が欲しそうな情報を先回りして提示するようなことが既に実用化されているし。
おもてなしで老舗旅館がAI(人工知能)を導入、自社サイト予約が2ケタ増も、 箱根で始まった経営者の挑戦を取材した(トラベルボイス)
https://www.travelvoice.jp/20171020-97287
4.最適解は常に変化する→出願断念、応答断念が最適解の場合もある
これも意味不明。AIと何の関係があるのか?なぜAIにできないと考えたのか?
何が言いたいのかわからない。
5.発明者を見抜く力がいる→発明者は往々にしてうそをつく
現在のAIによるウソ発見器は目覚ましく進歩している、といった記事は枚挙にいとまがない。面倒なので、知りたい人はぐぐるなり何なりと。
改めて5項目を見てみたが、そもそもこの方はAIで何ができるか知らないようだし、どういったことが出来そうか、という考察も全くないと思われる。立場が立場だけに話せないこともあるだろうし、記事が発言を婉曲している可能性も否めないけど、反論するならもう少し理論武装しろよ、と。弁理士会の会長がこんな体たらくで本当に大丈夫なのか?と不安になる。
いずれにしても、世の中の大多数の人は恐らくAIの進化についていてないのだろう。私自身、とてもついていけてるとは思えない。誰にだってバイアスはあるし、劇的な変化を許容できないこともある程度仕方ないことだが、こういう謎の反論にはむなしさを覚えずにはいられない。自分の職がAIによって9割奪われる、という指摘があったらこんな風に考えられないのだろうか?
「それなら残った困難な1割に集中できる。素晴らしい!」