2018年9月13日木曜日

地域活性化の10年遅れ

最近SNSを眺めていると、地元で頑張ってる(らしい)人が講師を務めるセミナーの告知が目につく。チラ見すれば、たいていはツッコミどころ満載の煽りコピーが並んでいて何とも脱力感を覚えるのであるが、最近は比較的リテラシーの低い若者が地域おこし協力隊などの制度を使って地方に流れてきているので、そういった需要もあるのかもしれない。そこでふと、私が地域おこし協力隊として委嘱された後、最初に出席する羽目になったセミナーのことを思い出した。

内容はほとんど覚えていないのだが、そのセミナーは通年で新商品の開発を身につけるためのプレセミナーのようなもので、早い話しが集客目的だった。成功事例で煽りつつ、Google先生に聞けば教えてくれそうなライトな話題で気を引くような流れ。お役所公認のようだったので露骨で派手なものではなかっせいもあってか煽りも弱く、とても興味を持てるようなものではなかった。そして最後に、1,500円くらいで売っている講師ご自身のビジネス本の紹介(笑)。本を見てみると、あぁ1,500円のライトなビジネス本だねぇ、という印象。今どきこんなので大丈夫なのか?なんて思ったのだが、よくよく考えてみれば、これは地域活性化の現場に10年前に流行ったものが再利用されているのだ、と気づく。

1,500円のビジネス本ブームを巻き起こしたのは神田昌典という人で間違いないであろう。それまでお堅い雰囲気だったビジネス書だったが、氏の本はピンクのカバーに読みやすいポップな文章。当時日本ではあまり知られていなかったエモーショナルマーケティングやダイレクトマーケティングを駆使して大成功を収めた人物が送り出した著書。ゆえに大好評だったようで、私も読んだことがある(はず)。これを皮切りに「即席スター経営者」のような謎の人物が次々と出てきて、軽いビジネス書を出してはセミナーを開いて集客する、という流れが出来ていたように記憶している。私もいくつか手を出したが、ひどいものは「お前ただのオッサンじゃないか!?」みたいなものもあった。先に話した地域活性化のセミナーは、まさに「ただのオッサン」でしかない即席スター地域活性化師?による当時の劣化コピーだった。少なくても当時の私はそう解釈した。

こんなトピックもある。地域活性化界隈のセミナーに行くとほぼ確実にやらされるのが、セミナーのお題について付箋紙に書いて、グループの中で模造紙にペタペタ張り付けてディスカッションする、というやつ。これも10年程度前に東京界隈では随分流行ったように思う。私も自分が担当したセミナーで参加者にやってもらったし、どこぞのセミナーに参加しても、たいてい同様のことをやらされた。この手は3回も経験すると邪魔くさいだけなのだが、学会発表を聞きに行った時にもやらされて辟易だった。蛇足だが、大学が本分を忘れている証左だよ、そんなもの。

地域活性化界隈に話しを戻すと、これらでやられている「付箋紙ペタペタ」は何の目的でやられているのか、いまいち分からない。まあ、チームビルディング、ブレインストーミング、場づくり、気づき、といった言葉が出るのは想像に容易だが、ただ集まった人でこれをやることにどういう意味があるのだろうか?私がセミナーで使ったケースでは、特定の意思決定においてツールとして使うことを提案するもので、参加者にそれなりの説得力を感じてもらえるように導入した。でも、その場限りの知らない人たちとそれやってどうするの?色々端折るが、主催者側がやりたいだけなんじゃないの?

少々脱線気味ではあるが、地域活性化界隈でやられていることの多くは10年以上前に都市部でやられていることの劣化コピーであることが非常に多いように思う。冒頭に挙げたセミナーの類も、そこから集客につなげてビジネスしていくような仕掛けでもあるなら評価するが、ほとんどのものは違うだろう。頑張ってる人の話しを聞いてもらいたい、聞いてみたい、程度の話しだ。まあ、東京でもひどいものだったことは先述の通りだが、地域活性化界隈では、そのひどいものの劣化コピーなわけだ。そういうものに浸っていたい人たちはそれでも良いのかもしれないが、私の周囲の人たちがそういうものに時間を浪費するようなことは、あまり好ましくないのである。

10年前の劣化コピーとは一線を画す取り組みを考え実施していきたい。

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